「……へっくしゅん!」
来田西がくしゃみをした。どうやら、湯冷めしてしまったらしい。ずっと裸の状態でいたのだから、当たり前だろう。
「もう一回シャワーに入ったほうがいいんじゃないか、寒いだろうし、顔も汚れてるし」
一応汚してしまったのは俺なのだが。ズボンを履き直しても、まだ温い感覚が、肉棒に残っている。俺は自分の制服を洗濯機に突っ込んで、洗濯を再開させる。
「あ、東くんも一緒に入りますか?」
「入らない」
ピシャリと言って、俺は脱衣所から出る。
「今度はちゃんと服着ろよ、そこにあるから」
それだけ言って、俺は脱衣所のドアを閉めた。閉める前に見えた来田西は顔にかかっていた精液を舌で舐めようとしていた。ほんと何してるんだあの女、しかも舐めた途端苦そうな顔してたし。
俺はベッドに横たわる。一体何が起こったんだ。脱衣所に入ったら来田西が裸で、転げて急にくわえてきて……。思い返してもまったくどうしてこうなったのかわからない。まあきっと来田西もパニックを起こしてしまったんだろう。あまり深く考えず、ラッキーくらいにとどめておくのがいいのかもしれない。
……いけない。ボーっとしていると来田西の裸や、くわえている光景を思い出してしまう。俺は無理やり目を閉じる。
すると色々あって疲れていたのか、ふっと意識は眠気に吸い込まれていった。
こ、この後どうしよう……。私はシャワーに当たりながら悶々と悩んでいた。あんなことをしてしまって、この後一体何を話せば……。もしかして、気持ちよかったから付き合ってとか言われる? それとも今後一切近づかないでとか言われる?
少し恐怖を覚えながらシャワーを終え、体を拭き、東くんが用意してくれた服に袖を通す。
……東くんの匂いがする。しばらく嗅いでいたいところだが、そこを東くんに目撃されてドン引きされたらいやなのでまっすぐ東くんがいるであろうリビングに行く。だが、東くんはベッドで寝てしまっていた。
やっぱり男の人は出した後眠くなってしまうんだろうか、そんなことを思いながら近寄る。しっかり寝ているようで、近づいても東くんが起きることはなかった。貴重な機会なので、東くんの寝顔を目に焼き付けることとする。
ほっほっほ、しっかり寝ておる。ちょっとイタズラしてもバレないかもしれない。……バレないかなぁ。また私は魔が差してしまう。すやすやと寝息を立てている東くんの唇を見た。――きっとバレない。もう話すこともできないかもしれないし。
私は顔を近づける。ちょっとだけ、ちょっとだけだから。東くんの唇に私の唇を重ねようとして、目を閉じる。そして――。
ピーピーピー!!!
脱衣所の方から大きい音がして、心臓が口から飛び出るくらいびっくりして私は東くんにキスすることなく顔を離してしまう。
「――ん、来田西シャワーから出たのか」
「は、はい! 出させていただきました!」
東くんが起き上がる。ああ、せっかくのチャンスが……。
「洗濯と乾燥終わったから」
しかも、もう東くんの家にいられる理由もなくなってしまった。さっき着替えたばかりなのに、どうせならもっと匂いを堪能しておくんだった。
私ががっかりしていると、言いにくそうに東くんがこちらを見る。
「……なんで下履いてないんだ、ジャージおいてただろ」
今の私は傍から見たらダボダボなTシャツしか着ていないように見えるだろう。それもそのはず、
「あの、下着を洗濯してて、ノーパンで履くのもなんかアレかな~って……」
「なんでだよ!」
Tシャツしか着ていないのだから。ブラジャーはおろかパンツも履いていない。いつもの癖で身にまとっているものすべて洗濯機に入れてしまったのだ。
「……えっち!」
「エッチはお前だバカ、早く制服に着替えろ」
それはほんとにそうなので、またもや脱衣所に入って制服に着替える。着替えた後、帰るために、テーブルに置いていたスマホをカバンに入れ、玄関に立つ。
「今日はご迷惑をおかけしました」
「うんまあ、確かに」
私はペコリと頭を下げ、そのまま帰ろうとする。
「また明日な、来田西」
「は、はい! また明日!」
がちゃっと扉が閉まる。また明日、話しかけてもいいのだろうか。自然と口角が上がってしまう。私は帰り道をたどりながら、カバンからスマホを取り出す。アルバムから、さっきこっそり撮っておいた東くんの寝顔の写真を選択して見る。
これは家宝にしよう。足取り軽く、最寄りの駅まで向かい帰るのだった。